インドについて
インドとかかわり、企業の変⾰と成⻑へ
地政学リスク、気候変動、エネルギー、サプライチェーン、ESG、組織運営など外的環境や課題が急速なスピードで変化しています。その不確実な時代に補完しあい⽣き抜いていくために、世界最大の民主主義国であるインドとの共創は⼤きな可能性を秘めています。
たくましく成⻑し続けているインドには、「国」「しくみ」「人」の3つの強みがあります。
国
インドの躍進を支える、若者、デジタル、グローバル
インドは、選挙権を9.5億人以上が持つ世界最大の民主主義国です。世界のGDPで第5位、2030年には日本を追い抜き、2075年には世界第2位になると予測されています。コロナ禍での経済の落ち込みからV字回復し、2021年度は前年比8.7%のGDP成長率、翌年は同13.5%で第一四半期が始まり、その後もプラスが続いています
同時に、2023年に世界一となる膨大な人口による社会課題があり、それは大きなポテンシャルでもあります。以下の3点がインドの継続的な成長を支える特徴です。
1. 若者
2022年のインドの人口は14億2千万人で、2050年には16.7億人*と拡大を続けます。その年齢中央値は27.9歳(日本は48歳)で、29歳以下が半分以上を占め8億人以上です**。若者が大きな消費市場を形成する一方、デジタルネイティブで、世界の情報やマーケットともつながり、グローバルアジェンダや元々の起業家マインドも加速化されて社会に大きな影響を持っています。
*国連人口推計(2022年改訂版)より(年齢中央値は中位年齢)
**The Indian Express (2022年5月)
2. デジタル
インド社会にモバイルインターネットアクセスが行き渡り、7.5億人がスマートフォンを利用し、2025年には10億人へと増加が予測されています*。また、世界で最も安価なレベルのモバイルデータ通信や、コロナ禍によるデジタルシフトにより膨大なデータ情報が日々生まれています。例えばインド版マイナンバー登録は13億人を超えています**。「21世紀の石油」とも言われるデータが、国力や企業の競争力を高める礎になっています。デジタルへのトランスフォーメーションを支える豊富なIT人材、開発力でもインドは国際的な競争力を持っています。
*Deloitte, “Technology, Media, and Telecommunications - Predictions 2022”
**UDAI CEO (2021年12月)
3. グローバル
インドへの海外直接投資(FDI)は、2022年までの8年間で85%の増加し*、政府による税制やルールの整備、インセンティブ制度の強化がさらに後押ししています。また、半導体に代表される世界のプライチェーンの枠組み変化や脱炭素など世界共通課題の解決の場としても、海外に向けて政府がアピールしています。
インドから海外に向けての近年の特徴としては、過去数十年にわたるITサービスやスタートアップの海外市場への参入、人材のグローバル化が挙げられます。「India For the World」という意識をもって地球規模での共通課題や市場を見据えた事業、プロダクト開発が際立っています。
*IBEF発表 (2022年5月)
しくみ
デジタルインフラ、イノベーションのエコシステム、サプライチェーン、教育システム
大国インドの社会基盤を支えるしくみは、その規模やダイナミズムに特徴があります。官民、そして投資や共創は海外各国も巻き込み、新たな価値を生み出しています。特に、以下の4つに着目しています。
1. デジタルインフラ
India Stackは、インド政府が主導する独自のデータ活用基盤です。個人向けインド版マイナンバーのAadhaarに加えて、法人がサービスを提供するために活用できる電子署名、送金などの機能があります。APIとして公開され、行政や企業によるサービス向上、新たなプロダクトやイノベーション創出に利用されています。Aadhaarは13億人が登録し、モバイルのリアルタイム決済は毎月28億回行われています*。将来のさらなるデータ社会においても、この巨大データ流通プラットフォームは、インド独自のインフラとして重要な役割を果たすでしょう。
*IndiaStack org
2. イノベーションのエコシステム
インドには、起業家、専門人材、大学、研究機関、企業、行政の支援、そして投資マネーを含む、新しいアイデアや技術、サービスなど価値を生み出すエコシステムが存在しています。インドのエコシステムの特徴は、多くのチャレンジを国内に抱える一方で、仕組みがグローバルとも自在につながっていることです。例えば、インドのスタートアップは、ヘルスケア、ロジスティクス、教育などのコロナ禍における国内の大きな課題解決にスピーディに貢献し、海外の投資家や多国籍企業からの投資や協業を取り付けました。企業価値10億ドル以上のユニコーン企業が2021年に44社誕生*したことは、その証といえます。
*インド政府発表(2022年1月)
3. サプライチェーン
象徴的なのは、世界の共通課題である半導体サプライチェーンの強化に、インドが官民を挙げて乗り出していることです。2021年12月に政府が大規模な補助金など支援策を打ち出し(半導体や液晶生産など合わせて7600億ルピー:約1兆3600億円)、翌年12月には大手財閥タタが半導体生産への参入と大規模な投資(グループとしてEVや再生エネルギー他の分野含めて5年間で900億ドル:約12兆円)を表明*。大規模な半導体工場をインド国内に建設予定を持つ資源大手ベダンタグループは、同月に日本企業10社以上と覚書きを交わしました*。世界の供給網というしくみへのインドの参画は、グローバルで期待されています。
*日本経済新聞による2社への取材(2022年12月)
4. 教育システム
次世代をリードする突出した若者を育てる、国策としての教育システムが存在します。例えば、IIT(インド工科大学)は1947年のインド独立後、国を支える人材育成という国家戦略の一つとして50年代に4校が創立され、2022年にはインド全土で23校に展開されました。入試倍率1%の難関を突破したインド全土から集まった優秀な人材に、世界のリーディング企業からの就職オファーが集まっています。
国全体の底上げとしては、2020年に新「国家教育政策」が発表され、「農村部と都市部の両方における初等中等教育から高等教育、更には職業訓練までの包括的な枠組み*」のビジョンを明示しています。
また、最近では対面授業ができないコロナ禍において数々のスタートアップ企業がオンライン学習の仕組みを強化し、教育機会の補完に貢献してきました。教育テック分野ではこれまでユニコーン企業が6社誕生したように、スピーディにインパクトのある仕組みづくりが民間主導で行われています。
*JST サイエンスポータル(2021年8月)
人
課題解決力、専門性、情熱をもつインド出身者が、不確実な時代をしなやかにリード
インド出身者や文化背景を持つ方々が世界を舞台に活躍しています。マイクロソフト、IBM、グーグルといったIT企業だけでなく、シャネル、スターバックスはじめ消費者ビジネス、マスターカードやフェデックスなどのトップとして企業を率いています。また、COP26など国際会議、米国の著名ビジネススクール、欧州の政治分野でのリーダーシップも注目されています。
この傾向は、インド国内での文化の多様性や社会環境の複雑さを背景に、リーダー達は課題解決を自身のミッションとしてとらえ、そのための知識とスキルを身に付け、邁進してきたことの表れでもあります。
インド国内外の企業トップだけでなく事業のリーダーやプロジェクトマネージャー、起業家、またIT技術者に限らず、医学や薬学の専門家、バイオテクノロジーや宇宙関連の研究者など、ビジネスに大きく影響する人材がインドで輩出されています。
不確実な時代だからこそ、またグローバル市場や多様性、ブレークスルーを求める企業から、インド出身者に期待が寄せられています。